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萌えよデブゴン [2002 日常]

 仕事にて消防関係の書類を作らなくてはならなかった。困ったことにワープロは一太郎で作るようにと指示されていた。僕のパソコンには一太郎は入っていない。仕方ないので同僚のパソコンを借りることにした。

 ワープロの日本語辞書というのは持ち主のクセを使い込むほど覚えていくようになっている。漢字変換をすると使用頻度の高い漢字から優先して現れるようになっているので、変換される漢字を見ると持ち主が普段どんな単語を使っているかなんとなくわかってしまうのである。

 同僚のA君のパソコンを借りたら「燃える」のつもりが「萌える」と変換されたのだ。いったい会社のパソコンでなにをやっているのだろう?僕は他にも変わった単語が変換されないか試してみようと思ったのだけど、なにをどう試せばいいか思いつかなかった。
 まあ、いい。そんなことよりさっさと仕事を終わらせることにしよう。
 最後の締めくくりの一言を入力してこの書類を完成させてしまおう。おりゃ、日本語変換!

















 「危険なので萌えやすい者は隔離してください。」


 A君は近々隔離される予定。


キトウさん [2002 日常]

 セクハラとはなんですか?


 知合いの女性にキトウさんという人がいる。身長は160cmちょっとあるので女性としてはやや背が高い。
 たまたま同じ職場にもう一人、同い年の女性でキトウさんがいるそうだ。その人は身長150cmくらい。同じ職場でキトウさんが二人である。年齢も同じで入社したのも同じである。同じ苗字の人が複数いると呼びわけが難しい。でもキトウさんの職場の方々は至極簡単な呼び分け方法を採用した。

 「大きいキトウさん」
 「小さいキトウさん」

 見た目というか身長をそのまま呼び分けの方法に採用したのだ。ところがキトウさん、この呼び方がご不満である。

 「大きいキトウさん。」

 こう呼ばれるたびに「セクハラだ!」と心の中で思うのだ。(なんでこの呼び方がセクハラになるのかは面倒なので説明を省く)もちろん、職場の方々もセクハラをしているつもりはないらしい。男性女性ともに「大きいキトウさん。」と呼ぶからだ。

 「でっかいキトウ。」

 こんな呼び方をする男性上司もいるらしい。「大きいキトウさん」ならまだしも「でかいキトウ」というのは確かにセクハラではないか?と僕も思う。
 キトウさんがかわいそうなので早く別の呼び方を考えてあげてほしい。「でっかいキトウ」なんていうのはあんまりだ。これは意図的なセクハラではないのか?キトウさんは「絶対セクハラだよ、サイテー!」と言って怒ってる。








 ただキトウさんは

 「コンパで‘でっかいキトウ’の話をすると絶対つかみはオッケーなのよ、うふ。」

 と自慢もしていた。
 どっちなんだよ?


ストーカー [2002 コント的テキスト]

 その時、私は見てしまったのです。

 こんばんは、家政夫です。
 家政婦ではなく、家政夫です。
 どうぞ「マサオ」と呼んでください。要するに政夫です。「家」は苗字です。


 つまるところ、昨今では家政夫たるもの見るべきものを見てしまわなければ家政夫として認めてもらえない厳しい雇用情勢の中ついに、その時マサオは見てしまったのです。
 これでマサオも立派な家政夫です、家政夫の仲間入りです。だからこのさい何を見たかなんてどうでもいいです。見たという事実が大事なのです。でもそういうわけにもいきません。世の中には「三匹の猿」がいて人を支配しているといいます。「三匹の猿」とは`見猿を得ない’`聞か猿を得ない’`言わ猿を得ない’の三匹です。いや本当にイヤなものを見せられたり腹立たしいニュースを聞かされたり言いたいことは満足に言えず思ってもいないことを言わなければ渡っていけない世の中です。だからマサオも言わざるを得ません。

 私を雇っているのは現在二人組の男。一人はタレ目でちょっと優しげな顔をした見方によってはイイ男。もう一人は小柄でいつもサングラスをかけた毛の薄い小太りの男。男の二人組だからといってもホモとかそういう話ではないのです。
 普段はふつうの人のごとく生活している二人ですがときどきおかしな行動をとります。二人でぜんぜん息の合っていないダンスを踊りだしたり、裏声でデュオで歌いだしたりします。まあ歌の方はうまいんですけど。

 で、何を見てしまったかというとこの二人、ストーカーだったのです。ストーカーです。え?ストーカー?わわわ!ストーカーなんですか?アブナイ!アブナイですよこの二人組。まさかストーカーだったなんて!そのうち後をつけまわしていた女の子を拉致監禁するのも時間の問題です。ていうかもうしてました。ええええ!拉致監禁!ヤバイ!しちゃったんですか?どどどどうしたらいいんでしょう?拉致監禁ですよ。ドキドキです。ドキドキですよ。ドキドキしませんか?今ドキドキした人、自分の人間性を疑ってください。
 で、この二人女の子を監禁して何をしているかというと強要しているのです。無理矢理です。いやがる女の子に命令しているのです。繰り返し繰り返し命令しているのです。
 「‘はい’と言え!」
 命令し続けるのです。
 「‘はい’と言え!」
 相手の迷惑や気持ちも考えず独りよがり、二人だけど独りよがりに何度も命令を続けるのです。しかも歌いながら。
 その様子をマサオはただ見ていることしかできなかったのです。


このままふたり(?)で朝を迎えて
いつまでも暮らさないか
愛には愛で感じ合おうよ
恋の手触り消えないように
何度も言うよ君は確かに
僕を愛してる
迷わずに ‘はい’と言え!(SAY YES) 迷わずに

愛には愛で感じ合おうよ
恋の手触り消えないように
何度も言うよ君は確かに
僕を愛してる
‘はい’と言え!‘はい’と言え!…

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食えないヤツ [2002 日常]

 げ、下痢が治らない…・。
 薬でいったん止まった下痢が復活。



 昨日は久々に石川君から電話があった。
 石川君は会社の社長で、最近忙しいらしく会っていなかった。まあ会社と言っても社長のほかは社員が2人と外注でまかなっている小さな会社だ。


 「おう、久しぶり。元気かね?」

 「まあね、そっちは?」

 「忙しくって大変だよ。なんか体がギシギシいってガタがきそうだ。」

 「ああ~、そういえば僕の方はハラがキリキリいって下痢がきてるよ。」

 「ほへ?下痢?ヒドイのかい?」

 「ああ、かなりヒドイよ。なんかね、食べたものがそのまま出てきちゃうよ。」

 「そんなにヒドイのか?」

 「まあね。」

 「すると今ナカムラのウンコを見るとその食生活がすべて丸わかり?」

 「もう‘ウンコ告白!衝撃!ナカムラ赤裸々食生活!’って感じだよ。」

 「お、週刊現代風な見出しだね。」

 「まあね。でもホントにヒドイよ。」

 「ほんとに食べたものがそのまま出てきちゃうのか?」

 「うん、だいたいはね。」

 「ゆうべ食べたネズミの死体がそのままウンコに?」

 「いや、死んだネズミなんか食べないよ。」

 「ゆうべ食べたネズミが生きたままウンコに?」

 「いや、生きてても食べないよ。」

 「それにしてもアレな、食べたものがそのまま出てくるってのは困るよな。見て昨日食ったもの思い出すのってなんかイヤな感じだろ。あ、アレはあの料理に入っていたあの野菜だ!とか。」

 「まあね。あとは小学生じゃなくてよかったよ。」

 「は?なんで?」

 「明日検便があったら困る。」

 「懐かしい!検便!」

 「検便の袋に下痢ウンコは入れれないでしょ。」

 「だはははは!」

 「しかもウンコと言うより未消化の昨日食べたものが入ってる。」

 「先生に‘ナカムラ君!検便の袋にどうしてネズミなんか入れたんですか!’って怒られたりして。」

 「いや、だからネズミなんか食べないって!」

 「でも、もし検便があっても心配することなんか無いよ。」

 「え、なに?」

 「だからさ検便に下痢だからって言っても心配することなんかないよ。」

 「え?でも食べたものがそのまま出てきちゃうんだぜ?‘ちゃんとしたウンコ’じゃなきゃ検便に持っていけないよ。」

 「だから‘ちゃんとしたウンコ’を食べてそのままウンコで出せば、ちゃんとしたウンコが出るじゃん。」



 そんなこと君にはできても僕にはできん!

ゲーリー [2002 日常]

 マジで下痢、すごくハラが痛い。
 もうダメ、トイレにいる時間のほうがその他の時間より長くなってきた。もういっそのことトイレにずっと居たほうがいいかもしれない。いやいっそのこと、トイレに住んでしまえばいい。

 そうだ、住めば都というではないか。花の都「WC」!おう、なんかWDC(ワシントンDC)みたいだ。こうなればアメリカの首都もトイレも似たようなものだ!
 いっそのこと僕の名前もかえてしまおう、アメリカナイズされたものに。ここはWCの住人としてやはり‘ゲーリー’と名乗るべきだろう。ゲーリー・ナカムラ。

 ポケットから黒マジックをとりだしトイレットペーパーの芯に「げえりい」と書いてみる。よし、これで表札ができた。後はコレをトイレの入口に貼り付ければ新たなる我が家としてWCが我が家から独立する。いやいっそのこと狭き国日本からも独立だ。なんといってもここは‘W.DC’ならぬ花の都‘WC’。新たなる都市国家の誕生だ。
 勝手に国民第2号はニコルをスカウトすることに決める。もちろん名前を‘WC.ニコル’に改名させてだ。

 コンコン

 む、なんだ?
 さっそく我が国に来客か?

 「さっきから待ってるんだぞぉ!早く出んかぁ!」

 父来襲。
 建国とともに国外退去を命じられたゲーリー。








 次は会社のトイレだ!


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四月バカとか特に関係ないです [2002 日常]

 昨日は部屋の片づけをした。


 6畳一間の部屋だが、そのキャパシティをはるかに凌駕する物質が詰められている部屋を片付けるのは一苦労だ。
 部屋の空間を一番占拠しているものといえば本だ。もはや三つ並べた本棚に収まることは不可能で床に積みあげたり箱に詰め込んである。どうも困ったことに僕は本を捨てたり売ったりすることに抵抗を感じるので山は大きくなる一方だ。その他にも会社から貰った資料や、もはやゴミとしか思えないけど捨てるのがもったいないととってあったガラクタなどで、部屋は瓦礫の山と大差ないような景観である。
 「部屋を片付けよう!」と僕は一大決心をし(一大決心が必要なほど散らかっている)貴重な日曜を費やして作業にかかった。

 実際に片付けを始めると‘片付け’というより‘発掘’と表現した方が正確なような気がしてきた。まあいろんなものが出てくるは出てくるは!
 とにかく部屋の入口付近から発掘作業を進めたのだが、本の山やガラクタの山をひっくり返すたびにいろんな物が出てくる。ゲームボーイとかCDとか皿とか靴とか。
 そういえばいらなくなったものを後で片付けようとかいって、部屋の奥に積みあげる悪癖が僕にはあった。部屋の入口付近ですでにコレだけのものが出てくるのだ。この先、部屋の奥のほうまで発掘を進めるとどういうことになるかわからない。
 ここで僕は少し作戦変更を考えた。とにかく通常の方法で奥の山まで片付けをしていくのは不可能に近い。ここはとにかく手当たり次第に山を崩していって必要なものだけを取り出し、後はまとめて処分だ!

 僕は考えをまとめると、手当たり次第に目の前のガラクタの山を掘り起こし部屋の奥を目指した。とにかく前進あるのみだ。1時間ほどせっせっと作業を進める。
 それにしてもいろんないらなくなったものが捨ててあるものだ。軟式ボール、テニスボール、パソコンの部品、マイク、なんかのケーブル…、あれ?なんだ?あれはなんだ?…ば、ばかな!そんなばかな!あ、あれはだ、男根ではないか!ど、どういうことだ?僕は知らないまに自分の男根がいらなくなって捨ててしまっていたのか?すると僕は女なのか?いやニューハーフなのか?歓楽街の奥でマニアックなおっさん相手に「あ~ん、こっちにも寄ってらしてぇ(はあと)」などと客引きをして生きていかなければならないのか?
 あせった僕は確認しようとあわててソレに駆け寄った。あ、あああ、なんだ。キノコじゃないか。いちおう自分の方も確認してみると当たり前だがちゃんとついていた。
 うーむ、それにしてもキノコが生えているとはもはやここもジャングルだな。それにしてもどれくらい僕は前進してきたのだろう?振り返って後ろを見ると、部屋の入口はもう遥かかなたにかすんで見えるほどだった。気づかぬうちにずいぶんと奥まで進んでしまったようだ。だが部屋の奥はまだ見えてこない。あと何マイル進めば一番奥地へたどり着けるだろう?いや、考えてもしょうがない。進むしかないのだ。それにしてもこの先にはいったい何が捨てられているだろう?

 さらに1時間ほど前進を続けるとさすがに疲れてきたので休憩をとることにした。その場に腰を下ろしてひと休みだ。

 「やあ、久しぶりじゃないか。」

 腰をおろしたとたん、突然声をかけられて僕は驚いた。ここには僕しかいないはずなのに。
 驚いた僕が振り向くとそこには僕がいた。

 ああ、そうか。彼は僕じゃないか。確かに僕だ。
 僕はある時人生においてヒドクつらい時があった。あまりのつらさに僕は自分をかえたいと思いかわりたいと思い、それまでの僕を捨てたのだ。今僕の目の前にいるのは僕がそのとき捨てた過去の僕なのだ。

 「僕は君だ。過去の僕だよ。」

 「…ああ。」

 「やっと想い出してくれたかい?」

 「いや、想い出さないよ。そのために君を捨てたんじゃないか。」

 「冷たいね、僕は君で君は僕なんだぜ?」

 「だからこそだよ。」

 「どこまでいっても僕は僕、君は僕、僕は君なんだ。過去のない未来がありえないように、僕が消えないことをわかっているんだろう、本当は?」

 「そんなコトいわれたってダメさ。ダメなんだ。」

 「やれやれ。」

 「・・・・・・・」

 「・・・・・・・」

 「・・・・・僕を恨んでいるのだろうね?」

 「いや、待っているだけさ。」

 「・・・・・なにを?」

 「君が僕を認められる程度に大人になってくれることさ。」

 「・・・・・ごめん、まだ無理だ。」

 気がつくと僕は泣いていた。そして僕はまた僕を置き去りして走り出していた。走り出したまま部屋を飛び出した。
 過去の僕は今も過去のまま僕を待っているというのに、僕は置き去りにして飛び出したのだ。







 つまり部屋も片付いていないまま置き去り。



薫河家 [2002 ショートショートなテキスト]

 久しぶりに香川(仮名)さんの店にいった。飲み屋だ。
 屋号は「薫河家」、読みは「かがわや」、名前の漢字をかえてあるだけ。カウンター席しかなくて小さいけど刺身が美味い店だ。香川さんは僕より若いんだけど、24歳で独立して店を開いた努力家だ。ちょっと尊敬している。性格は明るくてちょっと天然ボケしている。
 香川さんは男だけど、明るい性格のせいか香川さんと話すのが目当てでくるお客も結構いるみたいだ。ほとんどおっさんだけだけど。

 で、僕が店に入ると常連ばかりだった。お互い名前は知らないけれど顔見知りな人たちばかり5人(僕を入れて)。こうして常連ばかりになるとお互い本当はよく知りもしない者同士なのだけど、ちょっと馴れ合いな雰囲気で語り合ったりする。
 なんでなんだか、今回はみんなで「ワル自慢大会」をやっていた。

 「オレはさー、昔こんなことやっちゃたのよ。」

 てな感じで。
 なんか1等をとると奢ってもらえるように勝手に話が決まっていた。むろん僕も途中から強制参加させられる。1等の条件は面白いワル。
 で、まあどんなワルが自慢されていたかというと、

 「ケンカ相手を入院させた。」
 「ヤクザの車に当て逃げ。」
 「弟の彼女と浮気。」
 「学校の図書室の本を古本屋で売却。」
 「賽銭泥棒。」
 「パトカーに追突。」
 etc…

 みんな色々やってるなあ…。
 で、僕はというと自慢できるようなワルなど一つもない。困った。

 「で、君の話は?」

 と、水を向けられたが本当に話すことない。でもこういう時になんにも話さないと場がしらけてしまう。なにか言わなくては。

 「実はなにも自慢できるようなワルをしたことがないんです。まあ、ここは‘人には話せないがオレは人殺し以外のワルは全部やった’ってことで勘弁してください。」

 ちょっと、みんな苦笑い。
 でもまあ軽く流して勘弁してもらえそうな雰囲気だ。そしたら香川さん、みょうに感心した口調で

 「すごいですね、ナカムラさん。」

 え、なにがですか?

 「人殺し以外のワルは全部やっちゃったんですか?僕は小心者なんで人殺し以外のワルなんて全然やったことないですよ。」






 そんなわけで今回の1等は香川さんに決定。



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