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四月バカとか特に関係ないです [2002 日常]

 昨日は部屋の片づけをした。


 6畳一間の部屋だが、そのキャパシティをはるかに凌駕する物質が詰められている部屋を片付けるのは一苦労だ。
 部屋の空間を一番占拠しているものといえば本だ。もはや三つ並べた本棚に収まることは不可能で床に積みあげたり箱に詰め込んである。どうも困ったことに僕は本を捨てたり売ったりすることに抵抗を感じるので山は大きくなる一方だ。その他にも会社から貰った資料や、もはやゴミとしか思えないけど捨てるのがもったいないととってあったガラクタなどで、部屋は瓦礫の山と大差ないような景観である。
 「部屋を片付けよう!」と僕は一大決心をし(一大決心が必要なほど散らかっている)貴重な日曜を費やして作業にかかった。

 実際に片付けを始めると‘片付け’というより‘発掘’と表現した方が正確なような気がしてきた。まあいろんなものが出てくるは出てくるは!
 とにかく部屋の入口付近から発掘作業を進めたのだが、本の山やガラクタの山をひっくり返すたびにいろんな物が出てくる。ゲームボーイとかCDとか皿とか靴とか。
 そういえばいらなくなったものを後で片付けようとかいって、部屋の奥に積みあげる悪癖が僕にはあった。部屋の入口付近ですでにコレだけのものが出てくるのだ。この先、部屋の奥のほうまで発掘を進めるとどういうことになるかわからない。
 ここで僕は少し作戦変更を考えた。とにかく通常の方法で奥の山まで片付けをしていくのは不可能に近い。ここはとにかく手当たり次第に山を崩していって必要なものだけを取り出し、後はまとめて処分だ!

 僕は考えをまとめると、手当たり次第に目の前のガラクタの山を掘り起こし部屋の奥を目指した。とにかく前進あるのみだ。1時間ほどせっせっと作業を進める。
 それにしてもいろんないらなくなったものが捨ててあるものだ。軟式ボール、テニスボール、パソコンの部品、マイク、なんかのケーブル…、あれ?なんだ?あれはなんだ?…ば、ばかな!そんなばかな!あ、あれはだ、男根ではないか!ど、どういうことだ?僕は知らないまに自分の男根がいらなくなって捨ててしまっていたのか?すると僕は女なのか?いやニューハーフなのか?歓楽街の奥でマニアックなおっさん相手に「あ~ん、こっちにも寄ってらしてぇ(はあと)」などと客引きをして生きていかなければならないのか?
 あせった僕は確認しようとあわててソレに駆け寄った。あ、あああ、なんだ。キノコじゃないか。いちおう自分の方も確認してみると当たり前だがちゃんとついていた。
 うーむ、それにしてもキノコが生えているとはもはやここもジャングルだな。それにしてもどれくらい僕は前進してきたのだろう?振り返って後ろを見ると、部屋の入口はもう遥かかなたにかすんで見えるほどだった。気づかぬうちにずいぶんと奥まで進んでしまったようだ。だが部屋の奥はまだ見えてこない。あと何マイル進めば一番奥地へたどり着けるだろう?いや、考えてもしょうがない。進むしかないのだ。それにしてもこの先にはいったい何が捨てられているだろう?

 さらに1時間ほど前進を続けるとさすがに疲れてきたので休憩をとることにした。その場に腰を下ろしてひと休みだ。

 「やあ、久しぶりじゃないか。」

 腰をおろしたとたん、突然声をかけられて僕は驚いた。ここには僕しかいないはずなのに。
 驚いた僕が振り向くとそこには僕がいた。

 ああ、そうか。彼は僕じゃないか。確かに僕だ。
 僕はある時人生においてヒドクつらい時があった。あまりのつらさに僕は自分をかえたいと思いかわりたいと思い、それまでの僕を捨てたのだ。今僕の目の前にいるのは僕がそのとき捨てた過去の僕なのだ。

 「僕は君だ。過去の僕だよ。」

 「…ああ。」

 「やっと想い出してくれたかい?」

 「いや、想い出さないよ。そのために君を捨てたんじゃないか。」

 「冷たいね、僕は君で君は僕なんだぜ?」

 「だからこそだよ。」

 「どこまでいっても僕は僕、君は僕、僕は君なんだ。過去のない未来がありえないように、僕が消えないことをわかっているんだろう、本当は?」

 「そんなコトいわれたってダメさ。ダメなんだ。」

 「やれやれ。」

 「・・・・・・・」

 「・・・・・・・」

 「・・・・・僕を恨んでいるのだろうね?」

 「いや、待っているだけさ。」

 「・・・・・なにを?」

 「君が僕を認められる程度に大人になってくれることさ。」

 「・・・・・ごめん、まだ無理だ。」

 気がつくと僕は泣いていた。そして僕はまた僕を置き去りして走り出していた。走り出したまま部屋を飛び出した。
 過去の僕は今も過去のまま僕を待っているというのに、僕は置き去りにして飛び出したのだ。







 つまり部屋も片付いていないまま置き去り。



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