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天は人の上に人を造らず [2002 コント的テキスト]

 突然諭吉が言った。

 「天は人の上に人を造らず。人の下に人を造らず!」

 それを聞いて隣にいた稲造がキレた。

 「うるせー!どーせ俺はお前の半分しか値打ちがねーよ!」

 他に二人いた漱石も騒いで諭吉を責めた。

 「俺たちなんかお前の十分の一だ!嫌味ったらしいんだよ!」

 お前らまとめてうるせー、と僕は思ったのだがどうにも寂しい光景なので黙っていた。
 ナカムラの財布の中は、今月も残り十日余りで微妙な数字だ。

ストーカー [2002 コント的テキスト]

 その時、私は見てしまったのです。

 こんばんは、家政夫です。
 家政婦ではなく、家政夫です。
 どうぞ「マサオ」と呼んでください。要するに政夫です。「家」は苗字です。


 つまるところ、昨今では家政夫たるもの見るべきものを見てしまわなければ家政夫として認めてもらえない厳しい雇用情勢の中ついに、その時マサオは見てしまったのです。
 これでマサオも立派な家政夫です、家政夫の仲間入りです。だからこのさい何を見たかなんてどうでもいいです。見たという事実が大事なのです。でもそういうわけにもいきません。世の中には「三匹の猿」がいて人を支配しているといいます。「三匹の猿」とは`見猿を得ない’`聞か猿を得ない’`言わ猿を得ない’の三匹です。いや本当にイヤなものを見せられたり腹立たしいニュースを聞かされたり言いたいことは満足に言えず思ってもいないことを言わなければ渡っていけない世の中です。だからマサオも言わざるを得ません。

 私を雇っているのは現在二人組の男。一人はタレ目でちょっと優しげな顔をした見方によってはイイ男。もう一人は小柄でいつもサングラスをかけた毛の薄い小太りの男。男の二人組だからといってもホモとかそういう話ではないのです。
 普段はふつうの人のごとく生活している二人ですがときどきおかしな行動をとります。二人でぜんぜん息の合っていないダンスを踊りだしたり、裏声でデュオで歌いだしたりします。まあ歌の方はうまいんですけど。

 で、何を見てしまったかというとこの二人、ストーカーだったのです。ストーカーです。え?ストーカー?わわわ!ストーカーなんですか?アブナイ!アブナイですよこの二人組。まさかストーカーだったなんて!そのうち後をつけまわしていた女の子を拉致監禁するのも時間の問題です。ていうかもうしてました。ええええ!拉致監禁!ヤバイ!しちゃったんですか?どどどどうしたらいいんでしょう?拉致監禁ですよ。ドキドキです。ドキドキですよ。ドキドキしませんか?今ドキドキした人、自分の人間性を疑ってください。
 で、この二人女の子を監禁して何をしているかというと強要しているのです。無理矢理です。いやがる女の子に命令しているのです。繰り返し繰り返し命令しているのです。
 「‘はい’と言え!」
 命令し続けるのです。
 「‘はい’と言え!」
 相手の迷惑や気持ちも考えず独りよがり、二人だけど独りよがりに何度も命令を続けるのです。しかも歌いながら。
 その様子をマサオはただ見ていることしかできなかったのです。


このままふたり(?)で朝を迎えて
いつまでも暮らさないか
愛には愛で感じ合おうよ
恋の手触り消えないように
何度も言うよ君は確かに
僕を愛してる
迷わずに ‘はい’と言え!(SAY YES) 迷わずに

愛には愛で感じ合おうよ
恋の手触り消えないように
何度も言うよ君は確かに
僕を愛してる
‘はい’と言え!‘はい’と言え!…

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馬鹿は風邪を引く [2002 コント的テキスト]

 「風邪をひいた。」

 「ふーん」

 「なんだよ、不思議そうな顔をして。」

 「いや、馬鹿は風邪ひかないっていうのにね。」

 「失礼な、僕が馬鹿だというのか。」

 「まあまあ。」

 「馬鹿は風邪をひかないというなら風邪をひいていない君こそ馬鹿だ。僕は馬鹿じゃない。」

 「おいおい、ムキになるなよ。」

 「だいたいからして、馬鹿は風邪ひかないなんて言ってるやつが馬鹿だ。」

 「だからムキになるなって!」

 「考えても見ろ、風邪なんて予防できる病気だ。それなのにひいてしまうというのは、風邪をひくのは風邪を予防する程の知恵を持たない馬鹿だけだということだ。」

 「・・・・・で、風邪をひいたんだって?」

 「ああ。」

 「お前、馬鹿だろう?」

 「失礼な。」
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